「急に涙があふれて止まらない」「理由もなく悲しくなって泣いてしまう」
そんな経験に心当たりはありませんか?
もしかすると、それはストレスや心の不調によるサインかもしれません。
この記事では、涙が止まらなくなる原因や考えられる病気、日常でできる対処法や受診の目安までを解説します。
症状に不安を感じている方が、前向きに回復を目指すきっかけとなれば幸いです。
涙が止まらないのはストレスのせい?それとも病気?

この章では、涙が止まらなくなる原因を「心因性」と「身体的要因」に分けて解説します。
強いストレスや不安が原因で涙が出ることがある
強いストレスや不安が続くと、自律神経のバランスが崩れ、涙が出やすくなることがあります。
特に副交感神経(リラックス時に働く神経)が急に優位になると、体が休もうとする反応が高まり、涙腺が刺激されやすくなります。その影響で、自然と涙が出やすくなるのです。
また、ストレスによってセロトニンなどの神経伝達物質が不足すると、感情をうまくコントロールできず、涙が出ることもあります。
これは脳が「涙を流すことで心を落ち着かせよう」と無意識に働きかけている状態と考えられています。
目の不調や体の病気が原因の場合もある
感情とは関係なく、体の不調で涙が止まらなくなることもあります。
以下のような症状が続く場合、眼科や内科での受診を検討しましょう。
病名 | 主な症状 | 主な原因 |
---|---|---|
ドライアイ | 目の乾燥感、異物感、かすみ目、涙が出続ける | 涙の分泌量の低下、パソコンやスマホの長時間使用 |
鼻涙管閉塞 | 涙が常にあふれる、目やにが出る | 涙の通り道が詰まることによる排出不良 |
アレルギー性結膜炎 | かゆみ、充血、涙目、異物感 | 花粉やハウスダストなどへのアレルギー反応 |
ストレスで涙が止まらないときに考えられる病気

身体の不調で病院を受診しても異常がない場合、以下のような精神疾患・状態からくる症状かもしれません。
- うつ病
- 適応障害
- 双極性障害
- 自律神経失調症
ストレスで涙が止まらないときに考えられる代表的な病気の特徴・症状について解説します。
うつ病|自己否定・無気力・不眠と併発
うつ病は、脳の働きや神経伝達物質のバランスが乱れ、感情や思考に影響を及ぼす病気です。
特に20〜50代の働き盛りに多く見られ、責任感が強い人や真面目な性格の人が発症しやすい傾向があります。
- 気分の落ち込みが続く
- 何をしても楽しいと感じられない
- 不眠や睡眠の質の低下
- 自己否定感、強い悲しみ
- 涙が止まらない、涙もろくなる
うつ病は一見すると適応障害と似ていますが、環境を変えても症状が続くのが特徴です。
適応障害|焦り・イライラ・疲労感がある
適応障害は、職場や学校、家庭などの環境ストレスにうまく対応できず、気分や行動に変化が生じる心の病気です。
特に10代後半から40代に多く見られ、進学・就職・転職・結婚など、生活環境が大きく変化するタイミングで起こりやすい傾向があります。
- 焦燥感やイライラが続く
- 集中力の低下
- 強い疲労感、だるさ
- 感情が不安定で涙もろくなる
- ストレス場面を避けたくなる
うつ病と症状が似ている点もありますが、適応障害はストレスの原因がはっきりしており、その環境から離れると回復しやすいという特徴があります。
双極性障害|ハイテンションと落ち込みの波がある
双極性障害は、気分が極端に高ぶる「躁(そう)状態」と、深く沈む「うつ状態」が周期的に繰り返される精神疾患です。
20〜30代に発症することが多く、ストレスや遺伝的要因が影響していると考えられています。
- ハイテンションな躁状態(多弁・多動・睡眠不要)
- 強い落ち込みや無気力
- 感情が不安定で涙もろくなる
- 自己評価の変動(過信と自己否定)
- 衝動的な言動、浪費、対人トラブル
双極性障害は、うつ病との区別が難しく、誤診や見逃しが起きやすいため、専門的な診断が重要です。
自律神経失調症|頭痛・めまい・不安感と併発
自律神経失調症は、正式な病名ではなく、さまざまな不調の総称です。
強いストレスや生活習慣の乱れなどにより、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れることで、心と体の両方に症状があらわれる状態を指します。
全年代で起こりえますが、特に思春期・更年期・中年期に多く、ホルモンの影響を受けやすい女性に目立ちます。
- 倦怠感、めまい、頭痛、動悸、発汗異常、不眠
- 胃腸の不調(便秘・下痢・腹痛など)
- 不安感やイライラ、気分の落ち込み
- 感情のコントロールが難しく、涙が出やすくなる
自律神経失調症は明確な診断基準がなく、検査をしても身体的な異常が見つかりにくいのが特徴です。
涙が止まらない人が抱えがちなストレス

このパートでは、年代や立場ごとに多くの人が直面しやすいストレスの原因や背景を紹介します。
自分に当てはまるものがないか、確認してみてください。
仕事のストレス|キャパオーバーや責任の重圧
仕事によるストレスを抱える人は多く、現代社会では珍しくありません。
なかでも、責任感が強くまじめな人ほど、無理を重ねて限界に気づきにくい傾向があります。
実際には、次のような状況に心当たりがある人も多いのではないでしょうか。
- キャパオーバーな業務量を任されて疲弊している
- 責任の重さに神経をすり減らしている
- 職場で相談できる相手がいない、孤立感がある
こうした状態を放置すると、心身に不調をきたしやすく、うつ病や適応障害につながることもあります。身体や心の不調に気づいたら、無理をせず休むことも大切です。
家庭・育児のストレス|女性に多い負担と孤独感
家事や子育てに追われ、自分の時間を確保できない状況が続くと、心の余裕がなくなっていきます。
特に女性は「母親だから頑張らないといけない」と無理を重ねがちで、周囲に助けを求めづらい環境から孤独感を感じてしまうことも少なくありません。
たとえば、以下のような悩みを抱えたまま、涙が出てしまうケースがあります。
- 子どもと1日中一緒で、誰とも会話できない日が続く
- 夫や家族に頼れず、家事も育児もすべて自分が背負っている
- 家事や育児が思い通りに進まず、自己嫌悪に陥る
こうした状態を放置すると心の不調につながる恐れもあるため、日常の中で少しでも自分を労わる時間を意識して取りましょう。
学校・将来の不安|高校生や大学生にみられる精神的負荷
進学や就職、成績、人間関係など、10代〜20代の若者は将来への不安と日常のプレッシャーの中で過ごしており、心のバランスを崩しやすい時期です。
特に「自分は何をしたいのか」「どんな大人になれるのか」といった自己認識や将来像への迷いが悩みの中心になりやすい傾向があります。
たとえば、次のような状況で心が不安定になる人も少なくありません。
- 周囲が進路を決めていくなか、自分だけが取り残されたように感じる
- 誰にも相談できないまま、不安を抱え続けて限界を迎えてしまう
- やりたいことが見つからず、「自分には価値がない」と思い込んでしまう
こうした精神的負荷を放置すると、不登校やうつ状態に進行する可能性もあるため、心の変化に早めに気づき、周囲に助けを求めることが大切です。
涙が止まらないときの精神状態をセルフ診断
以下の項目に、いくつ当てはまりますか?
最近の自分の様子を振り返りながら確認してみてください。
- 理由もなく涙が出ることが増えた
- 夜になると感情があふれて泣いてしまう
- 仕事や学校のことを考えると涙が出てしまう
- 人前で感情を抑えられず泣いてしまうことがある
- 最近、眠れない日が続いている
- やる気が起きず集中できない
- 人と話すことが面倒に感じる、孤独感がある
- 小さなことでも責められている気がする
- 家族や友人に相談できないと感じている
チェック結果の見方
・3つ以上当てはまる方:精神的な疲労が溜まっている可能性があります。
・5つ以上当てはまる方:ストレスが限界に近づいているかもしれません。診療機関の受診や、誰かに相談することを検討してください。
※当セルフチェックは医学的な診断ではありません。現在の心の状態を把握する目安としてご活用ください。
また、厚生労働省のホームページでもストレスのセルフチェックを無料で受けられます。より詳細に確認したい方は、厚生労働省「5分でできる職場のストレスセルフチェック」から確認してみてください。
ストレスで涙が止まらないときの対処法

ストレスで涙が止まらないときは、できることから少しずつ対処していきましょう。
ここでは、すぐに試せる具体的な対処法を紹介します。
規則正しい生活を意識する
睡眠不足や不規則な食事は、自律神経を乱し、感情を不安定にさせます。
いきなり全部を変えるのは大変なため、まずは同じ時間に寝るなど、できることから始めてみましょう。
- 毎日同じ時間に寝起きする
- 朝起きたら日光を浴びる
- 朝食を抜かず、栄養バランスのとれた食事を意識する
- 夜はスマホやPCの使用を控えて、質の良い睡眠をとる
コツコツ継続することで、心と身体のバランスが整いやすくなります。
軽い運動や深呼吸、瞑想を取り入れる
身体を軽く動かしたり、呼吸を整えたりすることで、心の緊張がほぐれます。
涙が出るほどのストレスは、自律神経の乱れと関係している場合が多いため、身体を使ったリラックス法が有効です。
- ウォーキングやストレッチなどの軽い運動をする
- 緊張を感じたら深呼吸をゆっくり5回繰り返す
- 瞑想する
毎日5分だけでも習慣に取り入れることで、心の余裕を取り戻しやすくなります。
趣味やリフレッシュを取り入れる
気分が落ち込みやすいときは、意識的に気分転換の時間をつくることが重要です。趣味やリフレッシュの時間は、心の回復につながります。
- 好きな音楽を聴く
- 映画やドラマで笑ったり泣いたりする
- 自然の中をゆっくり歩く
- 絵を描く・料理をするなど手を動かす
- コーヒーやお茶をゆっくり飲む
何かを始めるのが面倒なときこそ、深く考えずに5分だけでも試してみると、気分が変わることもあります。
信頼できる人に気持ちを打ち明ける
涙が止まらないときは、一人で抱え込まず、誰かに話すことが心の安定につながります。言葉にすると、気持ちが整理され、安心感が生まれます。
- 無理に理由を話そうとせず「最近しんどい」など短い言葉だけでもOK
- 話しづらい場合は、LINEやメッセージでも伝えてみる
なかなか話せる相手がいないときは、自宅から利用できるオンラインカウンセリングも選択肢のひとつです。話を聞いてもらうだけでなく、今の状態に合ったメンタルケアの方法を知ることもできます。
「誰かに頼るのは甘え」と感じる必要はありません。あなたの心を守るために、頼れる選択肢を持つことはとても大切です。
ストレスの原因から距離をとる
ストレスの原因が明確な場合は、「逃げる」「離れる」ことも選択肢のひとつです。
無理に耐え続けると、心が限界を超え、回復までに時間がかかる恐れがあります。
- 有給休暇や休職を検討する
- SNSの使用頻度を減らす、通知をオフにする
- 無理な人付き合いを控える
一度立ち止まり、自分を守る選択肢として、距離を取る勇気も大切です。
涙が止まらない状態が続くなら医療機関へ

涙が何日も止まらない、気分の落ち込みや不眠が続く場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
まずは、内科で全身的な健康状態をチェックすることが大切です。
ホルモンバランスの乱れや自律神経の不調、栄養不足など、身体的な要因が関係しているケースも少なくありません。
また、以下のような症状がある場合は、それぞれ専門の診療科の受診も検討しましょう。
- 目の痛み・充血・異物感がある場合:眼科
- 気分の落ち込み・不安感・不眠などが強い場合:心療内科や精神科
心療内科や精神科は予約制のところが多く、すぐに診察が受けられない場合もあります。
その際は、オンラインカウンセリングを併用するのも一つの選択肢です。
つらさを抱えたまま放っておくと、心身の状態が悪化する恐れがあります。「少しおかしいかも」と感じたときこそ、早めにケアを始めましょう。
ストレスで涙が止まらない人が抱くよくある質問

ここでは、ストレスで涙が出やすくなっている方が疑問に感じるよくある質問に回答します。
ストレスが限界に達した時に出る症状は?
ストレスが限界を超えると、心と体の両方に異変が現れます。
下記のような症状は、自律神経や脳の機能がうまく働いていない状態です。
- 強い疲労感、倦怠感が続く
- 集中力が落ちる、ぼんやりする
- 夜眠れない、眠りが浅い
- 食欲が落ちる、逆に過食になる
- 動悸や息苦しさを感じる
- 理由もなく涙が出る、感情が乱れやすい
限界を超える前に、環境を見直したり、専門機関に相談することが大切です。
泣くことが増えたのはうつ病の兆候ですか?
泣く回数が急に増えた場合、うつ病の初期症状である可能性があります。
特に、理由もなく涙が出る、気分の落ち込みが続く、眠れないといった状態があるなら注意が必要です。
一方で、「最近よく泣くけど元気なときもある」という場合は、一時的なストレス反応かもしれません。
症状が2週間以上続いている、日常に支障を感じている場合は、一度心療内科に相談してみると安心です。
少し言われただけで泣くのは病気ですか?
すぐに涙が出てしまうからといって、必ずしも病気とは限りません。
ただし、感情のコントロールが難しい状態が続いているなら、心の疲れやストレスが関係している可能性があります。
- 疲労や睡眠不足による自律神経の乱れ
- 軽度のうつ状態や不安状態
- 心の余裕がなくなり、些細な言葉に反応しやすくなる
感情が不安定な時期が続くときは、一度専門家に相談することで、気持ちが整理しやすくなります。
仕事中に涙が止まらないのは甘えですか?
決して甘えではありません。
涙があふれるのは、意志が弱いからではなく、心がすり減ったときに現れる自然な反応です。
職場でのプレッシャー、人間関係のストレス、過重労働などが積み重なると、感情をコントロールする余裕がなくなってしまいます。
だからこそ、今の自分を責めるのではなく、まずは心と体をしっかり休めることが大切です。
限界を迎える前に、休息をとったり、相談できる環境を見つけたりと、自分を守る選択肢を考えましょう。
まとめ|涙が止まらないのは、心が出しているSOSのサイン
この記事では、涙の背景にあるストレス要因や考えられる病気、対処法、そして受診の目安について解説しました。
涙が止まらない状態は、心が限界を知らせているサインかもしれません。
ストレスや精神的な負担、あるいは身体の不調が重なると、感情のコントロールが難しくなるのは自然な反応です。
つらさを一人で抱え込まず、生活習慣を見直す、信頼できる人に相談する、必要に応じて医療機関やカウンセリングを活用するなど、自分を守る選択肢を持つことが大切です。
「少しおかしいかも」と思ったら、まずはゆっくり休んでみる、誰かに話してみる。そんな小さな行動が、自分を守ることにつながります。
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