うつ病の治療は、抗うつ薬などを使った薬物療法と、十分な休養の2つが大きな柱となります。その2つと、患者さんの状態に合わせて精神療法が行われます。
「薬物療法」
うつ病の治療の中でも、中心となるのが抗うつ薬による薬物療法です。
抗うつ薬と聞くと、「体や脳に悪影響ではないか」「ずっと飲み続けなくてはいけないのか」と不安になる人もいますが、最近では、副作用の少ない薬も開発されていますので、医師の指示通りにちゃんと飲んでいれば、心配することはありません。
薬物療法は、症状の改善に大きな効果が期待できます。うつ病が完全に寛解すれば薬を飲まなくてもよくなりますが、症状が回復しても、再発を防ぐために、 半年から1年は継続して薬を服用する必要があります。
うつ病治療の基本は
“薬物療法”
“精神療法”
“十分な休養”
の3つが大きな柱となりますので、覚えておきましょう。
「心の問題の治療には精神療法が有効」
うつ病の治療では、薬によって脳の神経の働きを調節し、うつ症状を改善していきますが、患者さんの心のケアには“精神療法”が有効です。
精神療法は、医師や臨床心理士が、患者さんの心に働きかけ、心の問題を改善していく治療法です。
精神療法は、色々な心の病気に対して行われる治療法で、患者さんによっては、薬物療法よりも高い治療効果がみられる場合もあります。
一般的には、症状が強い初期の頃は薬物療法で治療を行い、症状がある程度落ち着いてきたら精神療法を併用するというやり方が多く見られます。
患者さんの症状や状態に合わせて、薬物療法と精神療法を併用して行なうと、より治療の効果が高まります。
「精神療法とは?」
患者さんの心理面にアプローチする精神療法も休養、薬物療法と共に重要です。
患者さんの心の問題は、薬では治すことができません。精神療法は、患者さんと治療者が一緒になって、うつ病を発症した原因や背景を探り、心理的なアプローチをしていく治療法です。
しかし、うつ病は精神療法だけでは治すことができません。うつ病の治療法は、最初に薬である程度症状を改善させてから、精神療法を行うというのが一般的です。
薬物療法と精神療法のどちらかだけではうつ病を治すことができないのです。
精神療法は、医師や臨床心理士が患者さんの悩みや不安を聞き、それを理解して支えていきます。
あくまでも主役は患者さんなので、患者さんの考えを批判すること、安易に励ますようなことはしません。
「精神療法の特徴」
○受容(何を言っても受けとめる)
○傾聴(指示は何も出さず、話を聞く)
○共感(悩みを自分のことのように理解する)
この3つを基本として患者さんの心にアプローチしていきます。
患者さんの話をよく聞き、手助けをすることで、患者さんの気持ちを楽にさせ、精神的に自立できるように回復させていきます。
自分に合った方法を見つけよう
精神療法には、さまざまな方法があります。適切な時期に自分に合った精神療法を受けることで、高い効果を得ることができます。
「認知行動療法」
認知行動療法は、認知療法と行動療法の二つの治療法のよいところを合わせた治療法です。
認知療法は、患者さんの考え方や認識の仕方のゆがみを修正し解決していきます。行動療法は、適切な行動を増やしていけるように、学んでいきます。
認知行動療法は、認知と行動の両方を、かたよることなく改善していくことを目標としています。
“認知”“行動”“感情”の3つがバランスをとれているか見ながら問題を解決していきますが、うまく実践できれば、非常に高い効果を上げることができます。
軽度から中度のうつ病の患者さんには、特に有効な方法といわれています。
「対人関係療法」
対人関係療法は、人間関係に焦点をしぼって、それを解決することで治療をする方法で、妻や夫、親子、親友などの親密な関係にある人との関係に焦点をあてていきます。
対人関係のトラブルが起きやすいうつ病の患者さんには、有効な治療法といわれています。
大切な人との死別が乗り越えられない、うまく人間関係が築けないなど対人関係の不安が解消されることは非常に重要です。
対人関係の適応能力を高めることで、うつ病を改善していきます。
この他にもさまざまな精神療法がありますので、医師とよく相談し、自分に合った療法を受けるようにしましょう。
「生活のリズムを整えることも大切」
うつ病の治療は、薬物療法と精神療法の他に、もう一つ重要なものがあります。それは生活のリズムを整えることです。
睡眠不足や運動不足、バランスの悪い食事、ストレスの多い生活など、日常生活の乱れは心身に悪影響をおよぼします。
特に重要なのが「休養」で、うつ病の治療において十分な休養をとることは薬物療法と同じくらい大切なのです。
うつ病患者さんは、心身ともに疲れきった状態ですので、とにかくゆっくり体を休める事が何よりも重要です。
とにかく何もしないで、徹底的に休みましょう。うつ病の患者さんには不眠などの睡眠障害の悩みを訴える人が少なくありません。
睡眠不足は、症状の悪化をまねく事もありますので、眠れないときは主治医と相談し、可能であれば睡眠導入剤を処方してもらうとよいでしょう。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格