うつ病の薬物療法には大きく分けて
“抗うつ薬” “抗不安薬” “向精神薬”
の3種類あります。ここでは、この中の抗うつ薬と抗不安薬についてご紹介しましょう。
薬物療法パート1は下記をご覧ください。
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うつ病の薬物療法 (向精神薬)
薬物療法で“抗うつ薬”“抗不安薬”のことをご紹介しましたが、ここでは“向精神薬”と薬物療法による治療方針についてご紹介したいと思います。 目次1 ...
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目次
「抗うつ薬とは?」
抗うつ薬は、抑うつ症状をやわらげる薬で、うつ病の薬物療法の中心となる薬です。
日本で使用が認められている抗うつ薬は、以下のものがあります。
三環系抗うつ薬(トフラニール、アナフラニール、トリプタノールなど)
もっとも歴史の古い抗うつ薬で、化学構造式に3つの環があることからこの名前がついています。
この抗うつ薬は、神経伝達物質である“セロトニン”と“ノルアドレナリン”の働きを高める作用があります。
と同時に、副交感神経から分泌される神経伝達物質の“アセチルコリン”の働きを抑制するため、抗コリン作用を引き起こします。
※抗コリン作用
抗うつ薬には、副交感神経から分泌される神経伝達物質のアセチルコリンの働きを抑制する働きがあるため、便秘や口のかわき、めまい、眠気、頻脈などが起こることをいいます。
この抗うつ薬は、副作用がでやすいという欠点がありますが、うつ病の改善率が非常に高いことから、いまだに治療薬としてよく使われています。
SSRI(パキシル、ジェイゾロフトなど)
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、日本では1999年に認可が下りた抗うつ薬です。
脳内にある神経伝達物質の「セロトニン」は、心を安定させる働きがあります。このSSRIは、脳内でセロトニンの再取り込みを阻害し、セロトニンの働きを増強します。
そのため、抗コリン作用による副作用が少ないのが特徴です。また、依存性もないため、患者さんにとっては飲みやすい薬です。
ただ、効果があらわれるまでに1〜2ケ月と長い期間がかかることがあるので、速攻性のある抗不安薬を併用することが多いようです。
副作用は比較的少ないのが特徴ですが、おもに飲み始めに、不安感や不眠などの症状があらわれることがあります。
SNRI(トレドミン、サインバルタ)
SSRIはセロトニンに作用しますが、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)はセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するので、高い効果が期待でき、薬の効き目が早いという特徴があります。
抗コリン作用も少なく、依存性もないので、患者さんにとっては飲みやすい薬です。副作用は比較的少ないですが、飲み始めに吐き気や頭痛、倦怠感などが出ることがあります。
また、血圧が上昇することあるので、高血圧の人には慎重に投与されます。
NaSSA(リフレックス、レメロン)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの作用を改善する働きがあります。
従来の抗うつ薬に比べ、速効性と持続性のある抗うつ薬として期待されています。
副作用は、倦怠感、眠気などがあります。
「抗不安薬とは?」
抗不安薬は不安や緊張をやわらげる薬で、“精神安定剤”とも呼ばれます。
抗不安薬は、重い副作用が少ない傾向にあるため、うつ病以外にパニック障害などの不安をともなう心の病気にも使われています。
抗不安薬は、一般的に抗うつ薬と比べて薬の効き目が早いというメリットがあります。
抗うつ薬の効果があらわれるまでの間、不安感などを抑えるために使われます。
抗不安薬は種類が色々あり、効果の強いものや、薬の作用時間が長時間のものから短時間のものまであり、患者さんの症状に合わせて使われます。
現在使われている抗不安薬のほとんどは、“ベンゾジアゼピン系”の抗不安薬です。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、脳内のベンゾジアゼピン受容体に結合し、この受容体を刺激することにより、神経の興奮をしずめる神経伝達物質のGABA(γ-アミノ酪酸)の活性を高める働きがあり、不安感や緊張感をやわらげてくれます。
主なベンゾジアゼピン系の抗不安薬には、ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、ロラゼパム(ワイパックス)などがあります。
現在よく使われている抗不安薬
短時間作用型(6時間以内)
クロチアゼパム(リーゼ)、エチゾラム(デパス)など
中間型(12〜24時間以)
アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、ロラゼパム(ワイパックス)、ブロマゼパム(レキソタン)など
長時間作用型(24時間以上)
オキサゾラム(セレナール)、フルジアゼパム(エリスパン)、クロキサゾラム(セパゾン)、ジアゼパム(セルシン)など
超長時間作用型(90時間以上)
ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)など
医師の指示通りに服用を
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、種類が多く即効性があるというメリットがある一方で、眠気やふらつき、倦怠感、記憶力や集中力の低下などの副作用が出るというデメリットがあります。
また、耐性があり、薬の効きが悪くなることがあります。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、色々な副作用があるため、長期にわたって大量に服用を続けることは避けたほうがよいとされています。
さらに問題なのが、長期にわたって服用すると依存性が出現し、なかなかやめられなくなってしまうことです。
ベンゾジアゼピン系の薬は服用を突然中止すると、症状が再発したり、吐き気、耳鳴り、けいれんなど離脱症状が出やすいため、自分の判断で勝手に服用を中止することは厳禁です。
服薬に関しては医師の指示に従いましょう。
まとめ
なるべくならお薬を使いたくないのが人間の本能ですが、医師の指示に従っていただければそこまで問題のあるお薬ではありません。
先ほどもお伝えしましたが、自分の判断で勝手に服用を中止するのであれば最初から薬物療法はオススメしません。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格