家族や周りの人がうつ病と診断されたときに、どのように接すればいいのかわからないと戸惑う人がいると思います。
ここではうつ病患者さんへの接し方や声のかけ方の注意点をご紹介しましょう。
「普段と変わらない接し方をする」
うつ病になって、いちばんつらいのは患者さん本人です。家族や周囲の人は、その気持ちを理解し、接することが大切です。
うつ病の患者さんは自分を責める傾向があります。
接し方が急に変わったりすると、自分のせいで気をつかわせていると自分を責めてしまいますので、必要以上に気をつかいすぎるのは逆効果です。
今までと変わらない、普通の態度で接することが大切です。うつ病の患者さんは、病気のせいで無気力になっていますので、それを
“怠けている”
“甘えている”
と責めるような態度をとるのは絶対にやってはいけません。
何も出来ないのは病気のせいなのですから、 患者さんを苦しめることになります。
そのことをよく理解し、あたたかく見守ってあげることが大切です。
「受け身で接する」
うつ病の患者さんは、話をすること、聞くことも苦痛に感じている場合がありますので、無理に話しかけることは患者さんの負担になります。
患者さんが自分から話そうとした時は、こちらから聞きたいことがあっても、じっくり話を聞いてあげましょう。
患者さんの話にしっかりと耳を傾け、話を中断させることなく、受け身で接してあげることが大切です。
あまり気をつかいすぎるのもよくないので、自然な感じでしっかりと気持ちを受けとめてあげましょう。
「うつ病になった原因を探らない」
うつ病の患者さんの家族は、どうしてうつ病になったのか、原因を知りたいという気持ちになります。
しかし、うつ病になった原因を問いただすことは、患者さんを苦しめるだけです。
うつ病になったのは自分のせいだと自分を責めることになり、逆効果になり治療にも影響が出ます。
また、患者さんが落ち込んでいるときに、
“どうしたの?”
“何を悩んでいるの?”
などと聞くことは、ますます患者さんを追いつめてしまいますので、やめましょう。
うつ病はすぐに回復する病気ではありません。早く良くなってほしいと焦る気持ちも分かりますが、回復をあせってはいけません。
その気持ちは患者さんにも伝わってしまい、患者さんを苦しめることになります。
徐々に回復していく病気だということを理解し、患者さん本人のペースに合わせて一緒に治療を進めていくことが大切です。
「うつ病の患者さんに言ってはいけない言葉」
落ち込んでいる患者さんを見ると、“がんばって”と声をかけたくなりますが、“がんばって”という励ましの言葉は禁句です。
患者さんは、頑張りたくても心や体がついていかない状態なのです。
自分はダメな人間だと自分を責め、周りに迷惑をかけていると罪悪感を持ってしまうので、このような励ましの言葉はやめましょう。
励ましの言葉や、患者さんを責めるような言葉、不安をあおる言葉もNGです。
例えば、
“元気を出して”
“あなたなら大丈夫”
“気を強く持って”
などは励ます言葉ですが、うつ病は元気が出ない病気なので、患者さんにはつらい言葉です。
また、
“精神力が弱いからダメなんだ”
“しっかりして”
“どうしちゃったの?”
“こっちの身にもなってよ”
などの患者さんを責める言葉も禁句です。
うつ病は精神が弱いからなるわけではありません。どうしたのかと聞かれても、どうしてうつ病になってしまったのかと思っているのは患者さん本人なので、ますます落ち込んでしまいます。
“ いつ治るの?”
“ 早く良くなってね”
と回復をせかすような言葉や、
“ちゃんと治るの?”
“この先どうしたらいいの?”
と患者さんの不安をあおる言葉もNGです。早くよくなりたいと思っているのは患者さん自身なのです。
なかなかよくならないと、つい言ってしまいそうになりますが、患者さんにはどうすることもできないのです。
励ますつもりが、逆効果になってしまいますので、家族や周りの人は知っておくとよいでしょう。
また、家に引きこもりがちな患者さんに
“気分転換に出かけてみたら”
“散歩にいこう”
などおせっかいをやくのもやめましょう。よかれと思って提案することが、患者さんにとっては負担になることがありますので、気をつけましょう。
「患者さんにかけてあげたい言葉」
うつ病の患者さんに声をかけるときは、相手の気持ちを落ち着かせ、気持ちが楽になるような言葉をかけてあげるとよいでしょう。
“つらかったね”
“よく我慢したね”
と患者さんに共感するような言葉や、
“ゆっくり休んでね”
“しばらく休んで病気を治そう”
と休養を促す言葉がよいでしょう。
他には、
“あせらないでゆっくり治そう”
“よくなるから心配しないで”
“何かあったら遠慮なく言ってね”
“あなたの味方だからね”
など、気持ちを楽にし、孤独感を感じている患者さんに安心感を与える言葉をかけてあげましょう。
患者さんに気をつかいすぎて、いかにも大げさな言葉や態度をとると逆効果となってしまいますので、今まで通り接するように心掛けましょう。
うつ病の治療には、家族の理解と協力が必要不可欠です。患者さん本人はもちろん、家族もうつ病について正しい知識を持ち、治療がスムーズに進むようサポートしていく必要があります。
患者さんのつらい気持ちを理解し、家族や周りの人があたたかく見守ってあげることが大切です。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格