うつ病は誰にでも成り得る病気ですが、それにはきっかけなどがあります。きっかけとメカニズムを理解して、予防していきましょう。
「うつ病が発症するメカニズム」
うつ病は、人間の脳の働きに何らかの問題が起きて発症すると考えられています。
ただの気分の落ち込みなのか、それともうつ病なのかを検査で鑑別することは難しいので、くわしい症状、どれくらい生活へ支障をきたしているかなどで判断することになります。
うつ病の症状は、やる気がでない、とても落ち込んで何もしたくないなどのココロの症状だけではなく、いつもより早く目が覚め、寝ようとしてもなかなか寝付けない、なんだか体がだるい、食欲がない、といった体の症状があらわれることもあり、どのような症状が出るかは人によって様々です。
「うつ病が発症する要因」
人間の脳の中では、情報を伝達、整理するためにさまざまな神経伝達物質が働いており、そのうちセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンは、モノアミンといわれています。
一部の研究ではうつ病は、このモノアミンが減ることで起きるのではと考えられています(モノアミン仮説)。
しかし、モノアミンの減少だけでうつ病が発症するしくみを説明できないこともあり、ほかにもいくつかの原因があるといわれ現在も研究されています。
うつ病の原因は一つではありません。遺伝や性格など様々な要因が重なって発症します。発症のきっかけはさまざまで、日常生活でのストレス、物事に対する考え方や生活環境などが合わさって引き起こされると考えられています。
なかには、楽しい出来事など良いと思われることがきっかけとなりうつ病を発症することもあるのです。
「きっかけとなる要因」
〇遺伝
遺伝がうつ病の発症に関係しているのは確かです。その遺伝的な要因に家庭や職場での環境やストレスなどが複雑にからみ、うつ病が引き起こされます。
しかし、うつ病になりやすい遺伝要因をもっていても、必ずうつ病になるというわけではありません。
特に、うつ病になりやすい遺伝的要因に加えて、例えば、まじめな性格でストレスを受けやすいなどの、本人がもつ生物学的要因や心理学的要因と、さらに外的なストレスなどの環境要因が作用することで発症すると考えられています。
したがって、遺伝的要因を持っていてもうつ病になる人、ならない人がいるのです。
○ストレス
過剰なストレスは心にダメージをあたえ、うつ病を引き起こす原因となります。
一時的なストレスよりも、長期間に渡って続くストレスが、徐々に心に不調をもたらします。人がストレスを受けた時の反応には段階があります。
ストレスの初期の頃は、本人はストレスを受けているという実感あまりないかもしれませんが、身体的な症状としてあらわれることがあります。
例えば、疲れやすくなる、頭痛がする、朝起きられないなどの症状がでることがあります。ストレスがかかっているという自覚のないまま疲れなどが蓄積していくと、体調はだんだん悪くなります。
そして、なかなか疲れがとれない、イライラする、夜眠れない、何もする気になれない、などココロと体に不調があらわれます。
さらにストレスが長引くと、ストレスに対処できなくなり、精神的にも身体的にも追いつめられ、うつ病を発症することがあります。
○環境の変化
うつ病のきっかけには、環境の変化が大きく関係します。
学生に起こるものとして、慣れ親しんだ学校からの卒業や新たな環境になる入学は、今までの友人関係とは違う人間関係を形成しなければならないため大きな環境の変化です。
また地元を離れて進学する場合などは、知らない土地での生活、今まで親がやってくれていた家事などが増えます。
また、受験は自分の将来を左右するものとなり、成績などにより友達との比較や周囲からの期待で強いストレスを感じることになります。
社会人に起きるものとして、転勤、リストラ、退職など仕事からくる環境の変化と、離婚、病気などの生活から来る急激な環境の変化は、強いストレスを感じ、うつ病を引き起こすことがあります。
また、就職や結婚、出産、引っ越しなどの喜ばしい出来事でも、本人にとっては心理的負担となり、新しい環境への不安などがストレスとなり、うつ病を引き起こすことがあります。
○性格
性格のせいでうつ病になるわけではありませんが、なりやすい性格というものがあります。
完璧主義で真面目、几帳面で責任感が強い性格の人は、うつ病になりやすいと言われています。
人から頼みごとをされると、自分を犠牲にしてまで頼まれごとをしようとするため、頑張りすぎてパンクしてしまいます。
また律儀で世話好き、気配りをする人は、人と争いごとが起きそうになると自分が我慢してしまいストレスを溜めてしまいます。
稀ですが、他には、何でも人のせいにしてしまう人、すぐ人に依存する未熟な性格の人です。
性格は生まれつきのものですから、簡単に変えることはできません。あまり考え過ぎるとストレスになってしまいますので、あくまでも一つの要因として考えるようにしましょう。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格