うつ病には、さまざまな精神的な症状がありますが、大きく分けると3つの症状があります。
感情面にもっとも強く症状があらわれ、「抑うつ」と「興味・喜びの喪失」がうつ病の中心的な症状です。
「感情面の症状」
感情面の症状には重苦しく嫌な気分が続く“抑うつ症状”と興味や関心がなくなる“興味・喜びの喪失”があります。
うつ症状になると、1日中ゆううつな気分が続き、気分が落ち込み、ため息をつく回数が多くなります。
また、毎日がつまらなくなり気分が晴れなく、気持ちがすっきりしない。などの症状があらわれます。
うつ病のゆううつ感は、とても辛く、言い表せないほどのイヤな気分が1日中、そして何日も続きます。
また、このゆううつ感は、悲しみというより“虚しさ”とのほうが近いかもしれません。
更にゆううつ感がひどくなると、訳もなく不安を感じたり、イライラする。じっとしていられなくなり焦燥感にとらわれ、勝手に涙が流れる、キレやすくなるといった状態になります。
喜びの喪失
もう一つの感情面の中心的な症状としてあげられるのが、“興味・喜びの喪失”です。
症状としては、
- 仕事や趣味などに興味を失い、何をしても楽しい、うれしいという感情がわかない。
- 顔に表情がなくなり、お笑い番組などを見ても笑わなくなる。
- 世の中の出来事やおしゃれに関心がなくなり、身なりがだらしなくなる。
- 異性への関心がなくなり、性欲が減退する。
などの症状があらわれます。
“抑うつ”と“興味・喜びの喪失”は、感情面の中心的な症状ですが、これらの症状がすべてそろわないとうつ病ではないというわけではありません。
これらの症状があらわれても、数日で治ってしまうのであれば心配はいらないでしょう。
この2つの症状のうち、どちらかが1日中、そして2週間以上続いているときは、うつ病が疑われます。
「意欲・行動面の症状」
意欲・行動面の症状として、意欲が低下し無気力になる“精神運動抑制”があります。
精神運動抑制とは、エネルギーが低下した状態になり、意欲が低下したり、行動力や決断力が鈍くなることをいいます。
- 何をするにもおっくうになり、何かはじめても、すぐに疲れてしまう。
- 仕事に行ったり、外出するのがめんどうになる。
- 動きが緩慢になり、一つのことをやり終えるのに時間がかかる。
- 声が小さくなり、話そうとしてもすぐに言葉が出ない。
などがあげられます。
これらの無気力な行動は、家族や周りからみると「怠けている」と見られがちですが、うつ病の症状の無気力や意欲の低下は、本人は「やらなければいけない」と思っていても意欲や気力がうつ病によって抑制されてできないのです。
「思考面の症状」
思考面の症状には、“思考力の低下”“マイナス思考と悲観的思考”“自殺願望のあらわれ”などがあります。
うつ病になると、思考力が低下し頭がうまく働かなくなります。
- 考えがまとまらず、アイディアが浮かばない。
- 頭がぼーっとして冴えない。
- ずっと同じことを考える。
という“思考抑制”の状態になります。
職場ではミスが多くなり、仕事の効率が低下します。
思考力の低下が進むと、何もできない自分に劣等感や無力感を感じ、自分を責めるようになります。
「悪いのは自分だ」「自分のせいで周りに迷惑をかけている」「自分は価値のない人間」などと思い込み、自分を否定するようになります。
このような自分を責める感情が強くなると、妄想的な考えにとらわれることがあります。
周りのみんなが自分の悪口を言っている、みんなに嫌われて避けられている、自分は不治の病にかかってしまった、自分は罪深い人間だなどの妄想にとらわれます。
最近では、こういった妄想もうつ病の症状の一つと考えられています。この妄想は、高齢者に多いといわれています。
思考面での特徴
また、うつ病の思考面の特徴として、物事を悪いほう悪いほうへと考える「マイナス思考」があります。
自分への評価が低くなり、「自分は何もできない人間だ」「自分は弱い人間」などと思い込みます。
物事がうまく行った時も「どうせ次は失敗する」と、悲観的・否定的に考えるようになり絶望的になります。
これもうつ病の特徴といえます。このような悲観的な考えにとらわれると、
- すべてを白か黒、善か悪と両極端な思考になる。
- 1回失敗しただけで、すべて失敗すると思い込む。
- 何事も悪い結果になると思い込む。
という考え方になり、柔軟性がなくなります。
それにより、自殺願望があらわれ、死にたいと思うようになります。
自分は何もできない人間だ、と自分を否定する感情が強くなると、「自分なんていないほうがいい」「死んだほうがましだ」「死んでしまいたい」などと考えるようになります。
実際に自殺を企てることもあります。自殺はうつ病で大きな問題となっています。
まとめ
いかがでしたか?
自殺は、うつ病になりかけの初期と、症状が軽くなり回復しかけてきた頃に多いといわれています。
患者さんが「死にたい」「自分なんていないほうがいい」などの言葉を口にした時は、家族は注意しなければなりません。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格