日本のうつ病患者数は年々増加しています。また、医療機関にかかっているうつ病患者さんの数は100万人以上いるとい言われていますが、医療機関を受診していない患者さんも多く、実際にはさらに多くの患者さんがいると言われます。
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「自ら命を絶つ人はうつ病の可能性も」
うつ病による自殺は大きな社会問題となっています。年間で3万人以上の人が自殺で亡くなっていますが、自殺をはかった人の大多数が精神疾患やうつ病を患っていたという調査結果があります。
また近年では、中高年の自殺が増加しており、その背景には長時間労働などの過労によるうつ病があるといわれ、社会問題となっています。
また最近は若い人の間で、うつ病より症状が軽い“軽症うつ病”と呼ばれるうつ病が増えています。
「軽症うつ病って?」
うつ病は、ゆううつな気分や気分が晴れない、興味を失い、何をしても楽しくないなどの精神的症状と、頭痛やめまい、睡眠障害などの身体的症状の多くが出て生活や仕事に支障が出てしまうのが特徴です。
一方、“軽症うつ病”の場合は、うつ病に比べると症状は軽く、疲れやすい、気分が落ち組むなどの心身の不調を訴えますが、仕事や生活面では大きな支障をきたさず何とかなっているという特徴があります。
集中力や食欲がない、眠れないなどの症状が続きますが、単なるゆううつなだけかうつ症状なのか判断が難しいため注意する必要があります。
軽症うつ病の診断は難しく、他の病気との見極めも大切になります。よく見られる気分の落ち込みなどの症状は、認知症やアルコール依存症、甲状腺などの病気でも起こることがあります。
そのため、その症状が軽症うつ病なのか、他に原因があるかどうかを病院でしっかり診断してもらうことも大切です。
そのうち治るだろうと医療機関を受診せずに放置していると、症状が悪化する恐れがあるので注意しましょう。
「軽症うつ病…自分でもできる回復法」
軽症のうつ病の場合は、自分でもできる回復方法が3つあります。まずは自分でうつ症状がでているなと思ったらためしてみるといいかもしれません。
〇前向きな態度をとる
これはうつ症状がでている人にとってはとても難しいことだと感じるかもしれません。
前向きな態度と言っても、毎日学校に通って授業をうける!などと今の自分にとっていつできるかわからない遠い先のことではなく、
明日は散歩で外にでてみよう!
などの近い先の、割と実現しやすいものにしたり、以前これをやって楽しかったな。うれしかったな。ということを考えればよいのです。
〇生活リズムを整える
うつ症状がでている人は、睡眠障害が出ていることも多く、夜眠れなかったり早朝に目が覚めてしまったりで、生活のリズムが崩れている人が多いのです。
最初は、毎日同じ時間に食事をしよう。などと目標を立てて徐々に生活のリズムを整えていけるとよいと思います。
〇より積極的な行動をする
だんだん、前向きな態度がとれ、生活のリズムも整ってきたら、家の外に出て、散歩やウォーキングなどの運動をしてみましょう。
家の中で身体を動かすよりも積極的な行動といえます。ただし、無理をすると症状の悪化などの可能性もありますので、事前に医師と相談しながら取り入れてみましょう。
「新しいタイプのうつ病」
近年うつ病の症状(抑うつ、眠れない、落ち込む、食欲の低下など)にあてはまらない新しいタイプのうつ病が注目されています。
この新型うつ病は“非定型うつ病”ともいわれ、20〜30代の女性に多い傾向があります。
この非定型うつ病は、抑うつ症状が強いにもかかわらず食欲もあり夜もよく眠れるので、過食や過眠となり体重も増える傾向があります。
このため、うつ病の一種とは気づきにくく、専門医でも診断が難しい病気と言われています。
また非定型うつ病は、同じうつ病でも治療法も異なるので、きちんと診断できなければ症状が悪化するおそれがあります。
またこの非定型うつ病は、パニック障害などを併発しやすいので注意が必要です。
「家族や周りの人が気を付けることは?」
ついつい言ってしまいがちな“ガンバレ”という言葉ですが、うつ病の人は、がんばれない自分を責めてしまうことが多いのです。
家族や周りの人たちから“ガンバレ”という励ましはプレッシャーに感じ逆効果となってしまいます。
励ますよりも、これが今出来ることなのだな、と受け入れてあげることが大切です。
うつ病は再発しやすい病気で、再発を繰り返すほど症状が悪化してしまいます。症状が軽症だからといって軽く見てはいけません。
「うつ病は誰でもかかる可能性がある病気」
自分はうつ病にならないと過信してはいけません。今やうつ病は誰でもかかる可能性のある、ありふれた病気だということを認識しなければなりません。
うつ病になると心や体に様々な不調を引き起こしますが、本人や周囲の人も“うつ病”とは気付かないことが多く、治療が遅れることがあります。
うつ病は早期に発見して適切な治療をすれば、十分に治すことができる病気です。
そのためには、患者さん本人や周囲の人が早く気づいて、専門家による診断および治療を受けることが大切です。
記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格